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UEKING ROOM

こんな本を読んできた 4  27番と53番

 
ベランダに置いたプランターにいわゆる猫草というのを育てていて、猫たちはそれをむしゃむしゃと喜んで食べては、そのあとゲボをして未消化の草と一緒に毛玉を吐き出して、またケロリとした顔をして遊びまわり、寝てしまう。 その猫草を食べるために、プランターの前で首を長く伸ばしてちょこんと坐っている姿を上から見ると、猫たちの肩甲骨がぐっとせり上がって飛び出して、まるでそこに翼があった名残のように、いやもしかしたら、たたまれた翼がしまわれているのではないかというような気になり、ル・グィンの『空飛び猫』のことをいつも思い出す。素敵な絵のついた短い『空飛び猫』の物語は村上春樹の翻訳で読み、翻訳の出ていない続きは英語の本を買って読んだほど、気に入った。その物語の中の猫には翼が生えていて、彼らは空を飛んでやってくる。何度読んでも、涙が出てくるくらいにいとおしい物語である。
翼を生やして猫草を食べている家の猫たちを眺めながらいつも、お前たちもこの翼を使って家まで飛んできたのだよねえ、と語りかけている。

猫の肩甲骨ももちろん、人間の肩甲骨だって翼の名残。

というわけで今月は『肩甲骨は翼のなごり』という本。

これは動物エッセイではなく、児童文学である。

植木さん、本当にこの本読んだのかなあ
?
あゆみさんから参考までにと渡された袋の中に入っていたのだから、たぶんそうなのだろう。それに確かにこの本には読んだ跡がある。ある本が買ったまま読まれずにいたのか、一度でも読んだものかどうかは本の「地(ち)」の部分を見ればよく分かる。地というのは天地の地で、本を立てたときに天辺の部分が天、その反対の本棚についている部分が地。よく読まれた本は地の部分が真っ黒になっている。手元の辞書を見てください。良く引かれた辞書の地の部分は真っ黒になっているはず。反対に辞書なんか飾りだよ、と言う人のものは真っ白のままだ。で、この本の地は真っ黒ではないが、人の手がページを繰った跡がある。
 そんなことを調べてしまったくらい、この本と植木さんのイメージがぴったり来ない。でもそれはこちらの勝手な思い込みで、人がどんな本に興味を持ったかなんて、他人に分かるはずがない。
簡単に言えばこんな話。

主人公の少年マイケルの一家が新しい家に引っ越すのだが、そこは大改修が必要である。特にガレージなどはごみ置き場のようになっていてとてもそのまま使えるようなものではない。そのガレージの中である日偶然マイケルは一人の男がいるのに気がつく。近所の友達のミナと一緒にだんだん彼と話をするようになる。一方マイケルの生まれたばかりの妹は生命も危ぶまれるという病気に掛かっていて、家族の心配はもっぱらそちらに向かっている。さて、マイケルとミナが話をするようになった不思議な男はスケリグ(これがこの小説の原題)と言い、年齢も不詳、第一人間なのかどうか、言葉が通じるのだからおそらくそうなのだろうが、よく見ると背中(つまり肩甲骨のところ)から翼が生えているのだ。

「スケリグはぼくの手とミナの手を取った。ぼくたち三人は、むきだしの床板の上にたまった月光のプールのなかに、手をつなぎあって立っていた。彼はてに力をこめほほ笑んだ。そして横に動き出した。手をつないでいるぼくたちも動いた。輪になってゆっくり回っているぼくたちの顔を、交互に月がてらしだす。一人一人の顔が光から影へ、影から光へと移動し、そのたびに、ミナとスケリグの顔はいっそう銀色になり、いっそう実表情になっていく。二人の目はどんどん黒くなり、どんどん空になり、射抜くようなまなざしが強くなっていく。一瞬、ぼくは二人の手を振り放し、輪をこわしたくなったが、スケリグの手はしっかりとぼくの手をつかんでいた。・・・・まるでぼくたち三人が一体になったかのような、三人がたがいの体の中に入り込んだみたいだ。頭の中に闇が広がり、次いで、夜のように果てしなく、月光の色に輝いた。一瞬ミナの背中に幻の翼が見えた。ぼく自身の肩から突き出ているデリケートな骨と羽毛を感じ取ることもできた。スケリグとミナと手をつないで、ぼくは床板の上に浮いていた」(
115-116ページ) 
というあたりがクライマックスのいいところなのだろうが、はっきり言ってピンとこない。ジュヴィナイルということで、文章は平明でそれは良いが、やさしくした分密度がなくなってしまい、大人の読者にはちょっと辛いものになっている。またマイケルという少年の成長が感じられないから、つまり物語の初めの彼と、最後の彼がそれほど変化していないのが物足りない。ま、年齢のせいでこちらの感受性が鈍っただけかもしれないけれど。
題名にした

27
番と53番については、実際本を読んで何であるか確かめてください。って、つまらないと言っておいて、読ませようとしているのはちょっとあざとかったかな。
もの足りないと思ったのはぼくなので、どうぞご自分で確かめてみてください。

肩甲骨は翼のなごり  デイヴィッド・アーモンド 山田順子訳東京創元社 2000年刊。 現在も入手可能。アマゾンのマーケットプレイスでは1円から。

"こんな本を読んできた 4  27番と53番"に一件のコメントがあります

  1. コメント from ayumi:

    植木家一家が『千と千尋の神隠し』にはまっていた頃、宮崎駿が「ぼくのお気に入り」をどこかで紹介していて買った本だと思います。

    当時私も読みました。
    前半の印象は残っていますが残念ながら結末に記憶がない・・・

    『空飛び猫』1巻と2巻は、この前長女の誕生日祝いに私が贈った本です。
    私も大好きです!

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